新生ザルツブルクの顔になれるか 南野拓実にかかる期待

新生ザルツブルクの顔になれるか 南野拓実にかかる期待

19歳でセレッソ大阪からザルツブルクに加入した南野も現在24歳。今季で6シーズン目となる。
ここでは、過去のザルツブルクでの南野を振り返りつつ、今季への期待を自分なりに薄っぺらく書いていきたいと思う。

絶対的な存在ではなかったこれまで

アディ・ヒュッター時代

南野が加入して最初の指揮官だったヒュッターは現在フランクフルトの監督

2015年の冬、セレッソ大阪のJ2降格もありザルツブルクへ移籍した南野はアディ・ヒュッター(現 フランクフルト監督)に評価され、シーズン途中での加入ながらリーグ戦で一定の出番を得る。
ELベスト32のビジャレアル戦1st legでスタメンを勝ち取ったのは指揮官からの信頼を感じる場面だった。この試合のパフォーマンス自体はあまり良くなく、前半のみの交代となってしまったが、最初のハーフシーズンを悪くない出来で終えた。

ペーター・ツァイドラー時代

後を継いだツァイドラー政権は半年も持たなかった

しかし、翌シーズンにそのヒュッターがクラブを去ってしまう。
クラブとの関係が悪くなってしまったのか、双方合意の上で契約解除。
ヒュッターはヤングボーイズへ行き、ザルツブルクはセカンドチームであるリーフェリングのペーター・ツァイドラー(現 ザンクト・ガレン監督)を昇格させる。
新シーズンがスタートすると南野の序列は下がり、リーグ戦の出番は途中からに。
転機となったのは、第4節のSVリード戦。
開幕3試合でまさかの未勝利スタートとなったザルツブルクはスタメンを入れ替え。南野はそれに応えて2得点を記録すると、出場時間を増やしていくことになる。

だが、ここで別の問題が起きていた。
チームが勝てないのだ。
CLの予備予選3回戦でマルメと対戦したザルツブルクはホームでの1st legを2−0で折り返しておきながら、アウェイで0−3の大逆転負けで敗退。
それにより、ELのプレーオフに回ることになったクラブは、ディナモ・ミンスク戦で1st legを0−2で落としたものの、2nd legでは南野の1ゴール1アシストで追いつき延長戦へ持ち込む。
120分でも決着が着かず、PK戦となったのだが、ここで南野、アタンガ、ベリシャが失敗して敗戦。
ザルツブルクはこのシーズン、ヨーロッパのコンペティションに出場出来ないという大失態を犯してしまった。

ダメージを受けたオーストリア王者はリーグ戦でもパフォーマンスが低調となり、18節の時点で2位となっていた。
国内リーグタイトルは最低義務のザルツブルクにとって、この成績は許されるものではなく、ツァイドラーはウィンターブレイクも迎えることが出来ずに解任された。

オスカル・ガルシア時代

選手、監督両方でバルセロナに在籍したオスカル・ガルシア

後任にはスペイン人のオスカル・ガルシアが指揮を執ることになった。
システムこそ4−4−2を基本布陣としてフォーメーションに大きな変化は無かったものの、選手時代にバルセロナに在籍し、監督としてもカンテラでの指導経験があったため、それまでのロジャー・シュミット(現 北京国安監督)、ヒュッターのパワー・フットボールから、レッドブルっぽくない(ラングニックっぽくない)ポゼッション寄りのチームになっていった。
結果的に、この交代によって持ち直したクラブはリーグ王者のタイトルを獲った上に、南野自身もプロキャリア初のリーグ戦二桁得点を達成するのだが、ガルシア就任以降はプレータイムが減少しており、新シーズンに向けて小さくない不安を個人的には勝手に感じていた。


というのも、ガルシアが南野をチームの戦術としてあまり好んでいないように見えたことに加えて、この夏はリオ五輪があったからだ。
シーズンが7月にスタートするオーストリア・ブンデスリーガにおいて、オリンピック出場による出遅れは、プレシーズンマッチでのアピールどころか、シーズン序盤の出場も難しくなってくる。
そのため、南野はリオ五輪で活躍して、このタイミングでザルツブルクからステップアップしなければならないと思っていたのだ。

16/17シーズン、その不安は的中する。
リオ五輪では1ゴール1アシスト(興梠の蹴ったPK獲得も含めるとkicker的には2アシスト?)と一定の個人結果を残した南野ではあったが、ザルツブルクに残留することになる。
少ない時間で得点を重ねてアピールするも、上位との対戦ではベリシャ(現 ラツィオ)、ラザロ(現 インテル)、ワンデルソン(現 クラスノダール)らが起用され、ベンチを温める時を過ごした。
冬にはチームのエースストライカーであるソリアーノが北京国安に移籍したことにより、監督に対して最前線での出場を直訴し、その願いが叶ったが、大きく序列が変わることはなかった。
このシーズン、リーグ戦で11得点とキャリアハイの記録を残し、ライバルを得点数では上回っていたものの、出場時間は僅か1140分だった。
当時、その得点効率が国内外で話題になっていたが、起用方法からして本人にとっては満足出来ないシーズンだったはずだ。

マルコ・ローゼ時代

「史上最強」のザルツブルクを作り上げたローゼ
選手時代はクロップにも指導を受けている

17/18シーズンはガルシアのサンテティエンヌ監督就任に伴い、U19からマルコ・ローゼ(現 ボルシアMG監督)が引き上げられた。戦術ブロガー出身のレネ・マリッチ(現 ボルシアMGアシスタントコーチ)とタッグを組んで、ユース版CLであるUEFAユースリーグでマンチェスター・シティ、PSG、バルセロナ、ベンフィカなどを破って優勝したことが評価された形だ。
ローゼはこれまでと違い、基本布陣を4−1−2−1−2に変更。南野は2トップの後ろのトップ下で主に起用されることになった。
チームはローゼの元、大きくレベルアップし、ELではレアル・ソシエダ、ドルトムント、ラツィオなど四大リーグのチームを次々と倒し、クラブ史上初のベスト4まで登りつめた。
これはロジャー・シュミット時代にサディオ・マネ(現 リヴァプール)やケヴィン・カンプル(現 RBライプツィヒ)らを擁してアヤックスを粉砕したあのチームの成績よりも上なのだ。
南野は前シーズンと違ってコンスタントに出場機会を得たが、ELのようなビッグゲームでは、トップ下に守備でも計算出来るシュラーガー(現 ヴォルフスブルク)が使われた。
しかし、途中出場から決めたソシエダ戦やラツィオ戦でのアウェイゴールなど「ジョーカー」として躍進に大きな役割を果たしたことは間違いない。

ローゼは18/19シーズンも続投。
ELでの活躍により数人の引き抜きがあったが、チームの骨格は大きく変わることなく、引き続きヨーロッパで存在感を見せる。
RBライプツィヒとのレッドブル・ダービーではダブルを達成し、南野もローゼンボリ戦で日本人初のELハットトリックを記録した。
グループリーグではスタメン出場もあった南野だが、やはり決勝トーナメントに入るとジョーカー役を抜け出せず、トップ下のファーストチョイスになるのはローゼがユース時代から指導しているヴォルフ(現 RBライプツィヒ)の方だった。

長々と振り返ってみたが、これまでの南野はチームの主力ではあるものの、リーグ戦での上位対決、国内カップ決勝、EL決勝トーナメントなど重要な試合ではスタメンに中々選ばれず、絶対的な存在になれずにいたことは確かであろう。

主力の大量流出によりチャンス到来

RBライプツィヒへ「昇格」したヴォルフはU21EUROで足首を骨折する大怪我 長期離脱となってしまった

ローゼが指揮した2年間は内容・結果共に高く評価された。となると、選手の引き抜きは避けられない。
昨季こそベリシャ(⇢ラツィオ)、チャレタ・ツァル(⇢マルセイユ)と主力の流出は最小限に留めていたが、今年の冬にハイダラが、今夏にはヴォルフが”兄貴分”のRBライプツィヒに吸い上げられることになり、エースストライカーのダブール(⇢セビージャ)、シュラーガー(⇢ヴォルフスブルク)、ライナー(⇢ボルシアMG)もステップアップを果たした。
ダブールと2トップを組むことも多かったグルブランセンも契約満了によりイスタンブール・バシャクシェヒルへと旅立ち、まだ決まってはいないが、不動の中盤アンカーだったサマセクも移籍は確実と見られている。

これにより、ローゼ時代を2年間主力で過ごした選手の内、アタッカーで残っているのは南野くらいになったのである。
ステップアップに取り残されたという意見もあるかもしれないが、今までよりも重要な役割を担えるチャンスが来たとも言える。

様々なポジションを経験し新監督から高評価

今季から指揮を執るマーズチ

4人の指揮官の元でプレーした南野は、その間に様々なポジションを経験した。
ヒュッターの時にはセレッソ時代と同じ左サイド、ツォルニガーやガルシア政権では右もこなし、ローゼにはトップ下を基本としながら、ヴォルフと併用する場合には最前線でも起用された。(ローゼは、ELで点を追うパワープレー時には、南野をウィングバックやインサイドハーフでも少しの時間ではあるが使った)

そして、ヨーロッパで大きく評価を上げたローゼがボルシアMGに引き抜かれたことにより、今季からジェシー・マーズチが指揮を執る。
このアメリカ人指揮官はニューヨーク・レッドブルズの監督から、RBライプツィヒでラングニックの隣に座り1年間のアシスタンコーチ修行を経てザルツブルクに来た、いわばレッドブルグループに育てられた指導者と言っていい。

そんなマーズチはインタビューの中で南野のユーティリティ性を評価しており、実際にプレシーズンマッチでは4−3−3のウィング、4−2−2−2のオフェンシブMF、4−1−2−1−2のトップ下などで起用している。
先日の国内カップ初戦では4−2−2−2の右オフェンシブMFで先発して1ゴール1アシストを記録し、上々のスタートを切った。

本人にとってもクラブにとっても念願のCL

昨季プレーオフのレッドスター戦では2-0の楽勝ムードから一転、僅か2分で2失点してまさかの敗退
写真は2アシストした元横浜Fマリノスのミロシュ・デゲネク(レッドスター)

ザルツブルクほどCL出場を寸止めされたチームはいないだろう。
古くは宮本恒靖や三都主アレサンドロがいた頃から、このクラブは何度もCLの予備予選、プレーオフで涙を飲んできた。
しかし今季、トッテナムの大逆転勝利のおかげで(昨季スパーズがCL準決勝でアヤックスに勝利したことでアヤックスの優勝が無くなったため)、鬼門だったプレーオフを戦わずに済み、遂にストレートインでの本選出場が決まった。

南野も今年1月に放送されたテレビ朝日の「日本サッカー新時代」のインタビューの中で、未来年表の24歳のところには「CLに出場する」と書き記されていた。
なので、日本のファンの中には「まだステップアップしないのか」という思いを抱いている人も少なくないかもしれないが、過去はともかく、今季の残留に関してはCLに出場することが出来ることから、南野本人としては望むところだという気持ちが大きいのではないかと個人的には考えている。

今季こそ最後のシーズンに

マネとケイタはザルツブルクから大きく羽ばたき欧州王者になった

とはいえ、ザルツブルクは長く居ていいクラブではない。
ここをステップに、主要リーグへ行けなければ、このチームを選んだ意味はないと言っていいだろう。
だからこそ、CLでプレー出来る今季は大チャンスなのだ。
ビッグクラブ相手に大きな爪痕を残せれば、扉は大きく開かれる。

日本代表でもレアル・マドリードと契約した巨大なヤングスターが頭角を現し、森保監督になってからファーストチョイスの南野も安泰ではない。

今日の深夜からリーグ戦がスタートし、本格的にシーズンが始まる。
南野にとって大きな挑戦となる今季を応援していきたい。

長々とまとまりの無い文章をここまで読んでくださりありがとうございました!南野選手だけでなく多くの日本人選手がより高いクラブやリーグに行って日本サッカーのレベルがもっと上がるといいですね。気軽にコメントなどしていってください!

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