特集:CLで注目すべきザルツブルクの6選手

今季クラブの歴史上初めてCLに出場するザルツブルク。
これまで何度も予備予選で涙を流してきており、悲願だったこの大会に挑む彼らの中で、特に注目すべき6人の選手を紹介したいと思う。

基本フォーメーション

まず今シーズン、ザルツブルクは監督、コーチ、選手の多くが引き抜かれてチームが大きく変わった。
指揮官には、ニューヨーク・レッドブルズ監督⇢RBライプツィヒアシスタンコーチを経てザルツブルクの監督に辿り着いた、まさに「レッドブルに育てられた」指導者であるアメリカ人のジェシー・マーシュが就任した。

彼は、MLS時代は4−3−3を採用しており、プレシーズンマッチでも様々な布陣をテストしていたが、オーストリアでは基本的に4−2−2−2を選択している。
そのファーストチョイスがこんな感じだ。


シーズンスタート時は、ハーランドと2トップを組むのはパトソン・ダカだったが、ファン・ヒチャンがアピールに成功しポジション争いをリードしている。
奥川も開幕2試合連続ゴールでスタメンに定着しかけたものの負傷。現在はショボスライがコンスタントにプレータイムを得ている。
ユヌゾヴィッチとムウェプは、相手の強さや戦術によってマーシュが使い分けそうな雰囲気だ。
右SBのポジション争いは、ほぼ横一線な状態で、ファルカスとクリステンセンのどちらがCLで起用されるか分からない。

それでは、注目の6選手を挙げていく。

注目すべき6選手

①エルリング・ハーランド

はっきり言って6選手の中でも、飛び抜けて注目すべきなのがこの19歳のノルウェー代表FWである。

昨シーズンの1月に母国の強豪モルデからザルツブルクに引き抜かれたハーランドは、ローゼ前監督の元ではほとんど起用されることは無く、FWの序列としてはダブール、グルブランセン、ダカ、ヴォルフ、南野、プレヴリャクらより下の7番手程度扱いのアタッカーだった。

そんな彼の名前が世界中に知れ渡ったのは今夏行われたU20W杯。
U20ノルウェー代表として出場したハーランドは、ホンジュラス戦で9得点の大暴れ。これで一気に注目を集めることになる。
しかしこの時のホンジュラスは、ニュージランドにも4−0で負けるくらいの大会最弱国と言っても差し支えないチームであり、彼の実力に対して懐疑的に見る目もまだ少なくなかった。(実際にノルウェーはホンジュラスには12−0で勝ったものの、ほかの2試合には敗れてグループリーグで姿を消した)

転機となったのは今シーズンの監督交代。
ローゼがボルシアMGへ引き抜かれてマーシュが就任すると、このアメリカ人指揮官はプレシーズンからハーランドをFWの中心としてチーム作りに着手。

すると、彼はその期待に応えて現在公式戦8試合で14ゴール5アシストの大爆発。(9/17時点)

そして、ハーランドの凄いところは、この驚異的な数字だけでなく、1試合の中でのパフォーマンスにもある。
身長194cmと恵まれた体格を活かしたプレーはもちろんのこと、さすがレッドブルがピックアップした選手だけあってスピードも兼ね備えている。ストライカーとしての得点感覚を持ちながらも、パス出しやクロスなどのアシスト能力も持ち合わせており、まさに万能なアタッカーだ。
しかも、PKキッカーを譲ったり、相手GKと2対1の場面で味方にゴールさせたりと、エゴを出し過ぎない賢さも見える。(これは今自分が多くの得点を獲れているからというのもあるかもしれないが)

CLではリヴァプールやナポリと対戦することになるわけで、彼がファン・ダイクやクリバリとどんなバトルをするのか注目して欲しい。

②ドミニク・ショボスライ

16/17シーズンにザルツブルクU18に加入したショボスライは、セカンドチームのリーフェリングで経験を積み、昨季後半から本格的にトップチームの出場に絡んできた。

その最大の長所はキックの精度。
セットプレーを含めた中長距離のパスでアクセントをつけることができ、ELのナポリ戦2ndlegで輝きを見せたこともあってアーセナルやユヴェントスが獲得を狙っているとも報じられた。

その反面で今季は少し懸念されるところもある。
ローゼ前監督はショボスライを4−1−2−1−2の左インサイドハーフで起用していたのに対して、マーシュは4−2−2−2のダブルトップ下で使っていることから、彼のストロングポイントであるミドル・ロングキックを使う場面があまり無いのだ。
さらに、ポジションが前目になってことで狭いスペースでのプレーを強いられ、少し窮屈そうな印象を受ける。

18歳ながらハンガリー代表の10番を背負い、代表ではそのトップ下でプレーしている彼がもうひとつ上のステップへ行くには、CLにおいてどれだけこのポジションで高いパフォーマンスを見せられるかにかかってるかもしれない。

③南野拓実

19歳でセレッソ大阪からザルツブルクに加入して今季で6シーズン目を過ごす南野。
中々ステップアップが叶わず、主力であり続けながらも絶対的な存在にはなれなかった(南野のザルツブルクでのキャリアを詳しく振り返ったコラムに関してはコチラ)彼も今シーズン状況が好転した選手の一人である。

マーシュは南野をプレシーズンから高く評価しており、4−2−2−2のダブルトップ下で起用。
ドリブル、ターン、プレッシングなど、公式戦4ゴール4アシストという数字以上の存在感を見せている。

南野に関して一番心配なところは「FIFAウイルス」だ。
森保監督になってから日本代表の主力となった彼にとって、アジア予選が始まり、長距離移動を強いられての代表戦を戦ってCLに臨むタイトな日程はコンディション面でやはり不安要素。
マーシュもそれを考慮してか、直近のリーグ戦ではスタメンから外すなどの措置を取っているが、どれだけ高いパフォーマンスを維持してヨーロッパを戦い続けられるかは分からない。

逆にその中で輝くプレーを見せることが出来れば、今度こそステップアップが見えてくるはず。
今季はその絶好のチャンス。活かして欲しい。

④アントワーヌ・ベルネード

昨季冬にハイダラがRBライプツィヒへ、そして今夏サマセクがホッフェンハイムへと2人のマリ代表コンビが移籍した際、当然クラブはその穴埋めとなる補強をするはずと思っていた。しかし、しなかった。
ならば、昨季まで主に控えの立ち位置だった、同じレッドブルのアフリカコネクションから獲ってきたムウェプが主力となるのだろうと予想した。しかし、それも違った。

マーシュの決断は、昨季冬にPSGからやって来たものの、ハーランド同様ローゼ前監督の元では序列がかなり低かったベルネードを中心に据えることだった。
すると、このフランス人センターハーフは、守備ではバランスを取りながらプレッシング、そのマイボールを攻撃に繋げるという、攻守両面で高いパフォーマンスを発揮して期待に応えた。

現在では、CLのような強豪と戦う時には3列目の相方はユヌゾヴィッチにすべきかムウェプにするかの議論になっており、ベルネード有りきのチームとなっている。

⑤ファン・ヒチャン

HSVからローンバックで復帰した韓国代表は、開幕当初ベンチだった。
しかし、持ち前のクイックネスを活かした相手の懐に入る動きで、ハーランドの相棒ポジションをパトソン・ダカから奪取。
今季は得点だけでなくアシストも量産しており、CLでもそれを見せることが出来れば、もう一度階段を登れるチャンスがあるかもしれない。

そんな彼が中々大きなクラブに行けないひとつの理由としては「2トップ以外で活きない」ことではないだろうか。
ザルツブルクでは、ずっと2トップの一角としてプレーしていたためスコアポイントを稼げていたが、ステップアップのチャンスだったロシアW杯では、主にウィングとして出場して不発。
大会後にドイツ2部のHSV行きを選択したものの、1トップやウィングで使われてシーズンたった2得点しか上げられなかった。

韓国代表では、パウロ・ベント監督が2トップを採用することはあるが、ファンウィジョやエースのソン・フンミンが起用されるために中々居場所を見つけることが出来ていないようだ。

そのため、CLではアタッカーとしてプレーの幅広さを見せることが重要だろう。

⑥奥川雅也

京都サンガにいた頃からそのドリブルは有名で「古都のネイマール」と呼ばれていた奥川。(彼のTwitterIDは@0414Neymarloveであることから、この呼び名は本人も気に入っているのだと思う)
そのドリブラーの彼には今季進化が見える。

今シーズンあげた3得点の内容は、カウンターから最終ライン中央のギャップを突いてGKをかわしてのゴールと、クロスにワンタッチで合わせた2得点という、ドリブラーとは思えない得点に直結するようなプレーで獲っているのだ。

ザルツブルクの(ラングニック派の)サッカーは、基本的にアタッカーの選手が中央突破を目指し、ピッチの横幅を取るのはサイドバックである。
そのため、2列目の選手はサイドラインを踏むようなポジショニングでボールを受け取ってドリブルを始めるようなプレー以上に、よりゴールに近い振る舞いが求められる。
そして、奥川にはこれまでそれが不足していた。

ザルツブルクに加入して南野とは違ってセカンドチームのリーフェリングからスタートした奥川だったが、同時期に加わったファン・ヒチャンらが得点を重ねてトップチームへ昇格していく中、彼は明確な結果を残すことが出来ずにローン修行の旅へ出ることに。

マッタースブルク(オーストリア1部)とホルシュタイン・キール(ドイツ2部)でのレンタルから戻ってきた今季、そこでの経験もあってか、マーシュは奥川を主力選手の一人とみなして、実質的な「ザルツブルク1年目」をポジティブなパフォーマンス内容で迎えることが出来ている。

そんな充実した彼の一番の敵はやはりサンガ時代から付きまとう怪我だろう。
今季も開幕2試合連続ゴールを記録した奥川は、前述の通りパフォーマンスが今ひとつだったショボスライとの序列をひっくり返せそうな時に負傷。
そして、復帰した先日のリーグ戦もいきなり得点を決めたにも関わらず負傷交代と、本人にとってフラストレーションの貯まるようなタイミングでの離脱が続いている。

「点の獲れるドリブラー」として進化を感じる奥川。
今季は今までと違って明らかにチャンスを多く得られる環境なだけに、それを逃して欲しくない。

おわりに

本当はもっと多くの注目選手がいるが、とりあえずこの6選手とした。
監督や選手が抜けてCL初挑戦ながら過渡期になるではと思われながら、リーグ戦では7試合で34得点という歴代最高の得点力を見せている現在のザルツブルク。
グループにはリヴァプールとナポリがいて突破するのはかなり難しいミッションではあるものの、サプライズを起こせるポテンシャルはあるのではないかと感じている。

長々と読み辛い文章をここまでありがとうございました!気軽にコメントなどもしていってください!

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